こんにちは、Aki です。
みなさんは ”バイリンガル” にそれぞれ違った習得レベルがあることをごぞんじですか?
”あなたがバイリンガルであるのなら、どのバイリンガルに当てはまりますか?”
今回はそのバイリンガルのそれぞれの習得レベルを簡単にわかりやすく、図解などもいれながらまとめていきたいと思います。
また、あなたが、またはあなたのお子さんのバイリンガル教育、育児をこれから始める方には、
- どのバイリンガルを目指すのか参考にする
- 注意しなければいけないことをチェックできる
- 学習めやすを決められる など
より高いバイリンガルレベルを目指すことにすこしでも参考にしていただけると嬉しいです。
- オーストラリアの公立幼稚園から高校で教師のアシスタント経験をもつ
- オーストラリアで現役公立幼稚園、小学校の教師のアシスタント
- 英語、日本語、中国語のトリリンガル育児で娘を育てる
特技:リサーチ力、計画を立てること、子どもに好かれる
いろいろな国の文化や、ことばのバッググラウンドをもつ生徒たちや、教師たちとのなかで、日々”ことば”がもつパワーを感じて生活しています。
バイリンガルとは?
2つの言葉で話せる能力を持つ人を意味する語。
実用日本語表現辞辞典
2か国語を母語として話すこと。またその人。
デジタル大辞泉(小学館)
2か国語を話すこと、2か国語使用者。
Wiktionary日本語版
二つの言葉を使用する能力を持っている人のこと。この能力に関しては明確な基準はないが、一般にはどのような場面、用途においてもかなり自由にコミュニケーションができるレベル以上のものを言う。
日大百科全書
二言語を自由に使いこなすこと。また、その人。
Oxford Languages
、、、とこのように辞典によっても、バイリンガルの基準は明確ではありませんが、共通することは”2つの言語が話せる。”ということになります。
専門家によっても”バイリンガル”の定義は異なるそうです。育つ環境や、世界中で使用されている言葉の数も約7,100以上といわれていますので、定義を定めることはできなくて当然かもしれません。
話せる言語数での分類とは?
話せる言語の数によって、呼び名も変わってきます。バイリンガルはモノリンガルよりもパーセンテージが高いのですね!
世界で約40%の人が*モノリンガルだといわれているそうです。
*1言語のみ話せる人のこと
世界で約43%の人がバイリンガルだといわれているそうです。
世界で約13%の人が*トライリンガル/トリリンガルだといわれているそうです。
*3言語話せる人のこと
”2言語以上、3言語以上、4言語以上を指して、マルチリンガルという場合もあるようです。”
世界で約3%の人が*クワドリリンガルだといわれているそうです。
*4言語話せる人のこと
世界で約1%の人が*ポリグロットだといわれているそうです。
*5言語以上話せる人のこと
”3言語以上、少なくとも6言語を指して、ポリグロットという場合もあるそうです。”
少なくとも12言語話せる人を指して、ハイパーポリグロットと言われているそうです。
バイリンガルの域に達するのも簡単ではないのに、ハイパーポリグロットの12言語って?!
記録に残っているハイパーポリグロットには12言語どころか、39言語とほかの数十の方言を話したとされる、イタリアの神学者であったジュゼッペ・ガスパロ・メゾファンティ枢機卿 (すうききょう) (Giuseppe Gasparo Mezzofanti 1774-1849)をはじめ、ギネス世界記録に認定されたジアド・ファザー(Ziad Fazah 1954-)は59言語を話せると公言しています。
でも、本当に彼らがどのくらい流暢にその言語を使えるのかは、証明するものが残っていません。
記録に残っている有名なところでは十代の頃、20言語話せるとYoutubeに動画をアップして、”世界最年少のハイパーポリグロット”として有名になったティモシー・ドナー(Timothy Doner 1995-)。彼はTEDx Talksで”言語の壁をやぶる”(Breaking the language barrier)というタイトルでスピーチしています。
下のYoutube動画は12言語話せるハイパーポリグロットのクリスティーン。フランス生まれで、両親はインド人。ハイパーポリグロットでこんなに12言語を流暢に話せるのは本当にすごいです。良いお手本だと思います。
習得時期によっての分類
早期、後期バイリンガル
言語学の専門分野では習得時期によって早期と後期の2つに分類されます。
早期バイリンガル:0~3歳までに2言語習得したバイリンガル 後期バイリンガル:4~6歳までに2言語習得したバイリンガル
早期 VS 後期バイリンガル!?
この早期と後期のバイリンガルの脳活動の違いを見つけた興味深い研究結果をみてみましょう。
参考:World Family’s Institute Of Bilingual Science
研究の参加者は、
3つのバイリンガル・グループ:早期バイリンガルの子ども10人
後期バイリンガルの子ども10人
早期バイリンガルの大人10人
2つのモノリンガル・グループ:英語モノリンガルの子ども20名
英語モノリンガルの大人9名
*子どもたちはデータ収集時、7歳から10歳
研究方法は、
この参加者全員に4種類の文を提示して、意味をなす文か否か、手元のボタンを押して回答。
研究結果は、
正解率と反応速度はバイリンガル、モノリンガルの3グループの子どもたちは同じ。
- このことから、バイリンガルがモノリンガルよりも文法処理能力が劣るということはないことの証明。
早期バイリンガル教育が母語の発達の遅れをまねくというのは間違いです。
脳画像データではバイリンガルの子どもの脳はモノリンガルの子どもよりも大幅に活性化していた。
- 子どもの脳は子どもの体験や環境によって変化していくため、バイリンガルのように2つの言語処理能力が発達していくことで、モノリンガルの子どもの脳より活性化する。
脳の活性化にもバイリンガル教育は良いですね!
早期と後期バイリンガルの脳では、早期バイリンガルの方が、言語にかかわる脳領域に大幅な活性化がみられ、後期バイリンガルの方が認知にかかわる脳領域に活性化がみられました。
- 後期バイリンガル脳の認知領域の活性化は、文法を認知領域で処理するためであり、認知領域での処理は意識的な努力が必要。
- 早期バイリンガル脳は、通常どちらの言語でも認知領域をあまり使うことがないので、意識的な努力をほとんどせず、自然に学ぶことができる。
特に生後から2つの言語を学び始めた早期バイリンガルの大人の脳では灰白質(かいはくしつ)の密度が高いという研究結果が多い。一般的に灰白質の多さは、より優れた課題遂行成績と関係性がある。
早期であっても後期であっても、この研究結果ではモノリンガルと同じように文法処理能力がつくわけですが、早期から学び始めることで、より自然に学べ、大人になってからの灰白質の密度にもつながるかもしれないです。
4技能(よむ、かく、はなす、きく)での分類
習得レベルの高い順に3つまとめてみます。
①バイラテラル(読み書き型バイリンガル)
2つの言語で、よむ、かく、はなす、きくができる。
*読み書き型という名称ですが、はなす、きくも含まれる。
例:2つの言語を完全母語として使うことができる。
どちらの言語を使った職にも難なくつけそうですね。
これはバイリンガルの理想的な完成形ですが、このレベルのバイリンガルを目指すのには相当な努力が必要になってきます。
➁会話型バイリンガル
きく、はなすは2つの言語でできる。よむ、かくは1つの言語のみ。
例:日本に住んでいて、英語と日本語で自由に会話することができるけど、読み書きは日本語だけ。など
このレベルまでたどり着けたら、あとで必要に応じて読み書きの力をつけていくこともできますね。
③パッシブバイリンガル(聴解型バイリンガル)
きくは2つの言語でできる。はなす、よむ、きくは1つの言語でしかできない。
ハーフのお子さんに多くみられます。
例:アメリカで生まれた日本人ハーフの子ども。小さい頃は日本人のお母さんと日本語で話せていたのが、小学校に上がるころから英語が強くなる。お母さんの日本語はきいて理解できるのだけど、はなせない、よめない、かけない。
到達度での分類
こちらも習得レベルの高い順から3つまとめてみます。
①バランスバイリンガル(均衡バイリンガル)
どちらの言語も年齢相応レベル。
例:2つの言語を母国語レベルで話せる。
これもまた、バイリンガルの理想型ですが、どちらも母国語レベルで使える人は少ないそうです。
②ドミナントバイリンガル(偏重バイリンガル)
2つの言語能力に差がある。
例:日本で生まれそだつ子ども。日本語と英語が話せるが、英語は年齢相応レベルではなせない。
バイリンガルの大半の方がこれにあたるといわれています。差の大小はそれぞれのようです。
③ダブルリミテッド(限定的バイリンガル)
どちらの言語も年齢相応のレベルにない。
例:日本語と英語が話せるが、どちらの言語も中途半端。
ダブルリミテッドはバイリンガル教育で1番避けるべきレベルです。
*セミリンガルという表現が少しまえまで使われていましたが、近年、差別用語として使われなくなりました。
文化習得からみた分類
言語習得と文化を知ることに関係はあるのかな?
ここでも3つにわけて見ていきましょう。
①バイカルチュラル
2つの言語、2つの文化習得。
例:はたから見ると、”何だかあの人日本人みたい!”と感じる日本語を話せる外国人。など
文化を学ぶには、その言語が使われている国に行って肌で感じるのが1番ですが、それが難しいばあい、その国に関連するイベントに参加してみたり、本や映画などで雰囲気を感じてみるのもいいかもしれません。
②モノカルチャル
2つの言語を習得しているが、文化習得は1つのみ。
例:日本語を話せる日本人帰国子女が、日本での生活になじめない。など
文化習得が大切だということがわかってきましたね。
③デカルチュラル
どちらの文化にも属さない。
例:日本で生まれた韓国人は、日本では”韓国人”だといわれ、韓国に行けば”日本人”だといわれ、自分がどちらの文化に属しているのか、わからなくなることがある。など
じつは、今回調べてみて、はじめてデカルチュラルという言葉を知りました。じっさいにそのように感じる人がいることにも再度気がつかされました。
私の娘の言っていたことを思い出しました。。。
オーストラリアで生まれて、日本で保育園や体験入学で小学校に通ったり、中国で幼稚園にも通っていた娘は、オーストラリアの小学校で多文化を祝うパレードでは、”日本の背景をもつ生徒”として浴衣を着たりして参加していました。家でお父さんと中国語ではなしていることから、”中国の背景をもつ”という生徒枠でもかこわれていました。
そんな娘は、小学校2,3年生の頃に、
お母さん、私って、なに人なんだろう?友達に”私はオーストラリア人”、、、って言ったら、びっくりされて、”違うでしょ、日本人でしょ?”っていわれたの。
と、言っていたことがありました。。。
が、中学1年生になった現在は、迷うことなく、
私はオーストラリア人。だってここで生まれたのだから。
といっています。
性格にもよると思いますが、周りにいわれる何気ない言葉や視線が、それを向けられた当人にとってはすごく傷つく場合もありますし、心にのこって自分に自信が持てなくなる人もいるはずですよね。。
母語の社会的地位での分類
自分の母語が社会の中でどれくらいの比重が置かれているか。
日本はモノリンガルの国なので、日本に住んでいて日本語を話さなくなるということは、まずないでしょう。
ここでは2つの分類があることをみていきましょう。
①アディティブ・バイリンガリズム(追加バイリンガリズム)
母語に加え、もう1つ社会的地位の高い言語が追加される。アイデンティティはみだれない。
例:日本で生まれた日本人の子どもが、親の海外転勤で外国語圏へ。自分の母語である日本語に加え、新たな言語が追加される。2言語使用することを自分らしいと思える、または違和感を持たない。
理想的な構図です。自然に他言語を受け入れたことによるものです。
②サブトラクティブ・バイリンガリズム(削除バイリンガリズム)
母語の社会的地位が低くなり、母語を使わなくなる、または使うのをさけるようになり、もう一つの社会的地位の高い言語のみを話す。
例:イギリスで生まれた日本人ハーフの子ども。幼稚園に通い始める前までお母さんと日本語で会話していたのが、幼稚園に通うようになり、先生も友達も日本語を話していないことに気がつき始める。仲良しの友だちが話さない日本語を話すのが恥ずかしいと思うようになり、どんどん英語がしめる割合が大きくなっていく。日本語は使わなくなり、話せなくなっていった。
このケースは両親が国際結婚したハーフの子どもや、海外移住した家族の子どもたちに多くみられます。日常の生活で大半を占める言語は、特に小さな子どもたちにとって、大きな影響力をもちます。
まとめ
今回は【バイリンガルの分類】あなたはどのバイリンガル?目指すのはどのバイリンガル?をテーマに、一言で”バイリンガル”といっても、たくさんの習得レベルがあることを、わかりやすくまとめてみました。
あなたがすでにバイリンガルだという方は、どの習得レベルでしたか?
バイリンガル教育、育児をはじめてみようと思っているかたは、自分が、またはお子さんが、最終的にどの習得レベルにありたいのか、あってほしいのかを大まかにでも決めることで、どんなことに力をいれていけば良いのかが見えてくると思います。
1つだけ注意がひつようなことは、どちらの言語も中途半端になってしまう、ダブルリミテッドになることだけは気を付けましょう。
注意すること、目指すものが決まれば、あとは実践するのみです!
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。